東京高等裁判所 昭和38年(行ナ)145号 判決
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〔判決理由〕(本件審決を取り消すべき事由の有無について)
二、原告は、本件審決は、(一)本願発明の各構成要素の新規性及び(二)各構成要素の結合のもたらす独特の効果を看過誤認した点において違法であり、取り消されるべきものである旨主張するが、この主張は、いずれの点においても、理由がないものといわざるをえない。すなわち、(一)<書証>並びに本件口頭弁論の全趣旨を総合すると、本願発明における各構成要素は、押出しノズルの導出口の断面積の数値限定の部分以外は、すべて本願出願前周知の事項であることを認めうべく、(この事実は、原告においても明らかに争わないものの如くである。)また、右数値限定については被告のいうとおりに判断され、この点に特段の技術的意義を見出しうべき証拠資料はないから、原告のこの点に関する主張は、すでにその前提において理由がないものというほかはない。
(二) 原告は、本願発明においては、各構成要素を結合することにより、品質において均質な、正確な寸法で経年寸法耐性を有する糸状体が得られる旨主張するが、被告も指摘するように、その主張のような特性を有する糸状体は、本願発明の構成要素のほか、溶融原料の加熱手段、押出し成型の際の押出しの量及び速度その他製造工程における各種条件をまつて得られるものであることはその製造過程に徴し、まことに見易いところであるから、本願発明は、これら多数の条件のうち、紡糸後に絞りを加える工程を省略したことにより、その変形をもたらすべき一要因を除くことができるという前記周知の技術に伴う当然の効果を附加したに止まるものと認めるを相当とするのみならず、本願発明において、特にその製品の均質、安定性を高めうることは、その構成要件の(3)及び(5)によつて表現された冷延伸加工を採用したこと(ただし、数値限定を除く。)にあるものと認められ、このような効果を奏せしめる冷延伸加工も<書証>の記載(「e延伸並びに後処理」の項「i連続糸の場合」参照)にみるように、ポリアミド等の溶融成型における処理として本願出願前周知のことであるから、この程度の効果をもつて、本願発明を特許性のあるものとするに足る特段の効果とみることはできない。したがつて、他に右判断を左右するに足る何らの証拠資料のない本件において、本件審決が本願発明をもつて特許を具備しないものと認定したことをもつて、各構成要素の結合による特段の効果を看過誤認したものと断ずることはできない。
(むすび)
三、叙上のとおりであるから、その主張の点に違法があるとして本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、理由がないものというほかはない。よつて、これを棄却する。
(三宅正雄 杉山克彦 楠賢二)